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幾原邦彦作品等について語るブログ

【KERA12月号】 世羅と兎河ギンの錯綜する世界。いずれが語る世界が現実なのか

以下ネタバレ含みますので、未読の方は注意してください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ネタバレ注意

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やられました。

11月号で一旦オチがついたと思っていたところに、まさかのドンデン返し。

時空を超えてつながる点と点。

兎河ギンの独白で始まった52話までの過去回想章は、終わってみれば世羅晶午が徳大寺に語る昔話として幕を閉じました。

 

いつのまに語り手が入れ替わったのか?

変わったのは誰なのか。

どちらが現実にあった出来事なのか。

ギンと晶午の語る世界は互いに両立しえない感がありますが、事実関係を整理してみましょう。

 

世羅晶午の語るところによると、真実は次のとおりです。

・ギンの両親は映画スターではなく、家はお屋敷ではなくメイドもいない

・彼は家の外へ出たことは一度もなく、ろくに食事も与えられず、長期の拘束で四肢は衰えていた

・近所に住む同い年の少女からもらった不思議の国のアリスの人形だけがベッドの下に隠してあった

 

つまり、35話から52話までの王子としての「兎河ギン」はギンが夢の中で作りだした虚像だったのです。

ギンに恋する有栖川も彼の夢の中で作り出した存在だったようで、実際に存在したのは不思議の国のアリスの人形だけでした。

この人形をくれた少女というのは、以前登場したヒツジ似の女の子でしょう。

 

真実のギンはベッドの上で拘束されたまま虐待を受けていました。

彼は夢の中では王子で有り続けましたが、その夢の中ですらも母親を映画スターとして美化し続けていたのです。

 

外界の世界を全く知らない彼は、寝床で天井を見上げたまま、王子としての暮らしを夢想していたのです。

 

では52話までの話は全てが夢だったのでしょうか?

 

世羅晶午の語り口から考えると、彼が母親から虐待を受けていて、最終的に命を奪われたのは真実だったように思います。

そしてイタルに導かれて燃えるキリンの血を得て、兎河ギンとして転生したのも現実だったと考えられます。

 

世羅晶午はなぜギンの過去と真実の物語を知っていたのか?

大いなる謎が残りました。

晶午は燃えるキリンの協力者として活動を行っていました。

しかし、ギンがかつて夢の中で王子だったことや、母親を映画スターとして崇め、屋敷で暮らす夢を見ていたことを、なぜ世羅晶午が知っているのでしょうか。

 

どうやら、彼は単に燃えるキリンに協力しているだけではなく、ギンの過去も未来も、その成り立ちの全てを知っているようです。

 

アイズバインの塔で警察の射撃を受けて負傷した彼は、身体に大きな孔が空いたまま生きています。

「燃えるキリンの黒い血」が彼にも流れているように考えられます。

どうやら全ての謎の鍵を握るのは彼のようです。

 

アリスは何者なのか。

現在の時間軸において、ギンの従者であるアリスは実在する存在にみえます。

しかし彼女は過去はギンが夢の中で創造した少女であり、現実には人形でした。

51話によるとイタルにより兎河ギンが転生したときに、ギンが一緒に連れて行ったため実体としての姿を与えられたようです。

元々人形だった彼女にキリンの血が流れているのか?現在はどういう位置づけなのかが気になるところです。

 

イタルの正体は?

羽熊塚イタルも、元はヒツジの作ったヌイグルミでした。

アリスの正体が人形だったことを考えると、彼も燃えるキリンの血を与えられてクマのヌイグルミから現在の姿になったと考えるのが自然かもしれません。

 

そして、そもそもヒツジも人形だったの可能性があります。

 

31話で裁縫の得意な女の子(世羅ヒツジに良く似ています)が、クマのヌイグルミのお嫁さんとして作成したお人形さん(名前はヒツジちゃん)が登場しました。

あの人形が世羅ヒツジの本体なのかもしれません。

 

もはや誰が人形で誰が実在する人間なのか。

 

だいぶ話が混乱してきました。

しかし入り組んだ糸を一つ一つ解きほぐしていけばきっと真実の姿が見えてくるはずです。

 

来月号までまた一ヶ月ありますので、時間をかけて考察していきたいと思います。