池袋の街と輪るピングドラム
池袋の街はよく知っている方だと思う。
近所に数年間住んでいたし、毎日通っていた時期もあるからだ。
大震災の日も池袋のビルに居た。
都市機能が麻痺して電車が止まり国道沿いを歩いて帰った。
『輪るピングドラム』の放送を観ていた時、キャラクター達のいる池袋の街がリアルに感じられた。自分のよく知るデパート、コーヒーショップ、手芸用品店等に冠葉や晶馬がいた。
そして少しずつ失われていく日常と消えてゆく世界は、他人事と思えなかった。
最終回の夜。
彼らをすぐ近くに感じていた。
彼らが愛おしいと思っていたもの、守ろうとしていたものがよくわかった。
彼らの生き方は自分がこうありたいと願うものだった。
二人の兄弟は、ガラスの欠片となり炎に焼かれてしまったが、
神話のような物語は不思議な何かを残してくれた。
放送終了から1年以上がたち、今は別の街に暮らしているが、
池袋の街に降り立つと、高倉兄妹とペンギンのことを考えてしまう。
よく知らない人は大げさだと言うかもしれない。
しかし2011年の年末、
あの作品は僕らが心から必要とする愛の物語だった。
あの日心に宿った何かは、現実に今後も生き続けるのだ。