【青蛾館】寺山修司初期一幕劇「狂人教育」
ギラギラと煌く満月の光。
絶叫する狂人たちの祝祭。
青蛾館の「狂人教育」は、狂宴的な歌と踊りで観客をシビれさせ、「正気と狂気」について問いかけるようなミュージカルでした。
寺山修司 初期一幕劇連続上演「狂人教育」
構成・演出・美術=青木砂織 音楽=本田実 演出助手=横山清祟
出演=石丸だいこ,伊藤弘子,影山晃子,山田ひとみ,関根麻帆,松山由佳,眞藤ヒロシ,冨澤力,針金信輔,野口和彦
5日火曜の夜に観劇しました。チケットは完売だったそうです。
【あらすじ】
3人の人形使いが人形劇を上演する。
劇の内容は、医者に「この中に一人だけ気違いがいる」と宣告されて疑心暗鬼になるある一家の物語。
そして人形劇の幕が上がる。台本に従って狂人探しに奔走する人形の一家。 しかし劇の途中で台本の先のページが消失する。
「狂人」とは一体誰のことだったのでしょう。
人形使いに操られていると妄想する「人形達」なのか
はたまた人形を操作する「人形使い」だったのか。
あるいは外部で世界を操るドクトルや「戯曲の作者」寺山修司や、観客のことだったのかもしれません。
いずれにせよ、他人を「狂人」とレッテルを貼ることにより、自分が「狂人」かもとの疑惑を逃れようとするのは、集団内部における私たちの生態そのもののようであると思いました。
唐突に出現する「影」。
野口和彦さんの存在感は抜群でした。
不思議のアリスにおけるチェシャ猫のような闖入者。
正気と狂気の正体を知るかのような妖しさがありました。
会場に入った時、既にウェンズデーが舞台の上で一心不乱に蝶の絵を描いていて、まだ設営の準備をしている最中なのかと思ってしまいました。
開演前に配布されたフライヤーを読んでいると、隣の席のお客さんが「さっきからあの子なにかやってるね。」「なんだろうね。」と話す声が聞こえました。観客が入場したら既に劇が始まっている演出はとても好きです。
「狂人教育」を見るのは今回が初めてでしたが、何度も観劇したくなる不思議な謎に満ちた戯曲でした。