101%メモ

幾原邦彦作品等について語るブログ

『LE THEATRE DE B ~Bの劇場~』圧倒的な愛らしさと儚さ。明日美子先生の幻想的な美の劇場

中村明日美子先生の『LE THEATRE DE B ~Bの劇場~』が発売になりました。一瞬にして恋に落ちてしまいそうな愛らしい絵柄。儚く感傷的な物語。ページを捲るごとに溜息がでるような美しい世界。ゴージャスな明日美子ワールドが凝縮したような一冊だと思います。しばらくはこれ一冊で幸せでいられそうです。

f:id:yuuki101Percent:20130429154758j:plain

『Gothic & Lolita Bible』に連載された読み切り漫画13話と、描き下ろし1話の全13話を収録。約7年に渡る同誌連載の終幕を彩る、豪華装丁傑作集。

f:id:yuuki101Percent:20130429154814j:plain

収納BOXも発売されました。装丁にこだわった画集に相応しく高級感があります。作りもしっかりしています。

f:id:yuuki101Percent:20130429154829j:plain

収納するとこんな感じ。美しい。これまで本棚の隅で佇んでいた『Aの劇場』が『Bの劇場』と出会って収まるべき場所に収まったという感じです。

感想諸々

Aの劇場よりもさらにカラフルになった気がします。この価格帯の漫画を買う機会はほとんどないのですが、鮮やかな色彩が紙の上に再現されていることに驚きました。電子書籍ではこの味わいは再現できないでしょう。美しい画集を所有するような喜びがあります。

各短編の感想(ネタバレ注意)

 

 

LE THÉÂTRE DE B ~Bの劇場~

LE THÉÂTRE DE B ~Bの劇場~

 

『テディ・ベアル殺人事件』

名探偵・蛇塚阿丸がいい感じですね。彼は「11人兄妹の末っ子でお姉さんがいる」などまだ描かれていない設定があるようです。

名探偵に事件の真相をあばかれて、テディ・ベアルは犯行を自供します。しかしあの台詞はぬいぐるみが話しているのでしょうか。それとも実は少女が話していたのでしょうか。多重人格の話と解釈することもできそうです。しかし、このシリーズでは人形が魂を宿す話が多数でてくることを考えると、ぬいぐるみに魂が宿った話と捉えることもできそうです。

少女とテディは一心同体です。彼女がいじめにあった時、テディは傷ついたでしょうし、テディがバラバラにされた時は彼女も復讐を誓ったことでしょう。

ある人は「猟奇的なミステリー」と捉え、ある人は「二つの魂の愛情の物語」と考えると思います。色々な解釈ができる作品だと思います。 

『寝台の娘 アトリエの娘』

天才人形師ゼペットの少し若い頃の物語。「魂と肉体は別のもの」と仮定した上で、魂の拠り所となる「人形」を作る試み。

前述のテディ・ ベアルは「所詮偽りのカラダ。生きながら死んでいるようなものだ」と述べていました。あのテディもこの少女のように魂を飛ばしていたのかもしれません。

理想の身体を得たいという少女の願いは挫折しますが、この話は上巻のピノ子の物語の前日談にあたるのでしょう。

肉体の喪失というテーマ

病や成長による肉体の喪失は『Bの劇場』において繰り返されるテーマでもあります。成長により少年の肉体を喪失するアリステア。森の境界を超えたアンペリー。養父に少年の姿をやめることを強制された小聖一白。母親の胎内から消失した姉。20歳のロリータ少女ヨーコは、例外的な明るい希望のような存在でもあります。

続編をぜひ

『A』と『B』の劇場が揃って完結した感がありますが、ファンとしてはまだまだ続きが気になります。アリスシリーズは完結したようですが、ヨーコとお師匠様の旅もまだ続きがありそうですし、前述の名探偵・蛇塚には「なぜ包帯をしているのか?」「一つ上の十子お姉さんは出ないのか」という謎が残ります。年に一話とか二話のペースでも良いので続きが読みたいですね。