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幾原邦彦作品等について語るブログ

クマのお茶会と薔薇の花

月刊コミックバーズ14年6月号に掲載されたユリ熊第3話の感想を書きます。

ネタバレを含みますので未読の方は注意してください。

 

 

コミック BIRZ (バーズ) 2014年 06月号 [雑誌]

 

 

 

今月はまた新たなクマが登場したり、銀子の新たな一面が見えるなど、今後の波乱を予感させる回でした。恋愛心理学的な話になるのかなという気もするのですが、相変わらず先の展開が読めない感じになっています。

 

銀子と友達になって明るい高校生活が始まった紅羽。自分も成長して変わっていきたいと考えるようになります。しかし銀子の行動におかしなところが見えてきました。

銀子の妙な行動

銀子はこれまでに、メガネを外させて「本当の紅羽」を発見したり、お昼をみんなで食べようと誘ったりするなど、紅羽がクラスに馴染むように応援してきました。

しかし今月号の終盤では、囲碁を覚えたいという紅羽の意志を制止して、囲碁入門の本を取り上げてしまいます。スケコマシの生徒会長から遠ざけたいのが理由のようですが、新しい可能性の開拓しようとするときに否応なく阻止するのは束縛の兆候のようにも見えます。

銀子の妙なところは、生徒会室でのやりとりにも見て取れます。

紅羽に興味を示す生徒会長に対して、銀子は「恋人にはなれないけど、(自分が)相手くらいはしてもいいから、紅羽には手を出すな」と言います。「相手くらいしてもいい」という言葉には、キスやそれ以上のことを意味しているようです。しかし紅羽に男を寄せ付けないために、交換条件として自分を差し出すのはいかにも変です。銀子は紅羽を「運命の人」と言っていて、ありのままの彼女を肯定したいようです。しかし今のままの彼女でいてもらうために、本人の知らないところで自分を犠牲するようなやり方をするのであれば、今後問題が生じる気がします。

紅羽も本能的に何かを感じているようです。紅羽の勘の鋭さはエスパー並みと言われているので、来月は彼女の感じた「不安」に従って「嵐」が来るのかもしれません。

今月の夢のシーン

夢の中のシーンは今月も幻想的です。

今月は新たなクマが2人登場しました。どちらも先月の生徒会長と一緒にいた男の子達ですね。彼らと生徒会長はアリスのティー・パーティのような空間で、チェスや読書に興じています。彼らは「普遍的無意識」の中の住人で、みんなの共有する夢の世界に居るようです。ここではユリの花ではなく薔薇の花が咲いています。紅羽の夢とは少し離れた空間なのかもしれません。「ペルソナ」「普遍的無意識」「元型」というユングの用語が登場しました。

 

現実のシーンでは、これまでのところ高校生・紅羽の葛藤と成長を追っています。そこではリアルな学校でのドラマが展開されています。一方で夢の世界はこれまでは紅羽の個別的な夢でした。そこでは紅羽の現実を反映するかのように、恐怖心が「人食い熊と透明な嵐」に、彼女を救う百合城銀子が「熊のお姫さま」として登場していました。今回「みんなの夢」というステージが出現して、これまでより一段フィールドが深くなった気がします。ここに「熊」「嵐」がどのように絡んでくるのかが気になります。