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幾原邦彦作品等について語るブログ

J・A・シーザー × 幾原邦彦トークショー◎寺山修司映像詩展2013

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J・A・シーザーさんと幾原監督のトークショーに行って来ました。

シーザーさんが寺山さんとの思い出や裏話を語り、幾原監督が聞き役になるような雰囲気でした。間近で観たシーザーさんはオーラに溢れており、幾原監督はいつもとは少し違って一人のファンのようでした。貴重なお話しがたくさん聞けた良いトークショーでした。
1974年/日本A・T・G/102分
カンヌ映画祭正式招待◎べナルマデナ映画祭審査員特別賞◎パース映画祭招待◎芸術祭奨励新人賞◎文部省芸術選賞
脚本・監督:寺山修司/撮影:鈴木達男/音楽:J・A・シーザー/美術:栗津潔/録音:木村勝英/編集:山地早智子/意匠:花輪和一/出演:八千草薫春川ますみ、新高恵子、高野浩幸、菅貫太郎原田芳雄三上寛
恐山を舞台に、自歌集『田園に死す』にもとづいた自伝的作品。
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トークショーは『田園に死す』の上映後に始まりました。司会の笹目さんの紹介を受けてシーザーさんと幾原監督が舞台に上がります。自然に笑いがこぼれ、和やかな雰囲気です。

トーク内容

印象に残っているのは次のようなものです。

シーザーさん「(田園に死すの) 最後の白い画面はなんであんなに長いんだろうね」

幾原監督「何かあるのかと思いましたね」

シーザーさん「この映画の撮影から年月(39年)が経ち、自分も年をとりました。冒頭子供たちが老人に変わるシーンがあるけれど、その老人になったような気分。この映画では5ヶ所僕は出演していたのだけど、5ヶ所わかった人います?(挙手を求めるが手は上がらず) じゃあ4カ所わかった人。3、2、1…0?( 0で手を挙げる人が多く、幾原監督も申し訳なさそうに挙手。場内笑 )しょうがないなあ。まあ画面で石とか出てくるとそっちに注目しちゃうか…」

幾原監督「シーザーさん恐山の崖の上にいた人かと思いました。」

シーザーさん「違うよ(笑) 僕が出てるのは、鞍馬天狗、棺桶を運ぶ男、サーカス(水を掛ける男)が2箇所、あとラストシーン。」

幾原監督「シーザーさん、ジーザス・クライスト・スーパースターのような格好で出てたイメージがあったんですけど、それは別の映画だったんですね。」

シーザーさん「この作品じゃその格好は難しいよ(笑)」

幾原監督「寺山さんの作品は若い頃に見ると凄くよいと思う。作り手の問題と社会の問題がテーマに織り交ぜられていて、こういう映画を作って良いんだと若いころに知るというのは凄い良い。今の自分があるのもこういう映画を見たおかげだと思います」

シーザーさん「でっかいカンガルーが出てきたりね。ウテナが最後にピンクのスポーツカーになったり。あれ今でもよくわからないけど」

幾原監督「マジで?シーザーさんわかってくれると思ったのに…(笑)」

シーザーさん「アレ(ウテナカー)実際に作って欲しいよね」

幾原監督「こんど話してみます」

質問コーナー

後半は来場者からの質問コーナーになりました。

質問1「シーザーさんへの質問です。この30年間、寺山さんの存在が重く感じたり、寺山さんから自由に解放されたいと思ったことはありますか」

シーザーさん「僕は天井桟敷にいて、おそらく寺山さんと向かい合ったことはないんです。いつも横にならんで同じ方向を向いていた。だからこの30年間、寺山さんのことが鬱陶しくなったりすることはなかったです」

幾原監督「桟敷の時代は運動の時代でテーマがあった。だからああいうエネルギーのあることができたのではないか。シーザーさんのいう同じ方向をむいて何かをやるという人間関係は今では難しい気がして羨ましくも思います」

シーザーさん「寺山さんは一日に本を10冊くらい読む人で、僕がなにか演劇のために本を読んだほうがいいですかと聞きにいったら、10冊くらいリストアップしてくれた。」

幾原監督「どんな本ですか」

シーザーさん泉鏡花とか、ドグラマグラとか。でもどちらも読めなかったな。」

質問2田園に死す」の一番最初の短歌が逆なのはなにか理由があるんですか?

シーザーさん「そう!逆だよね。『大工町 寺町米町 仏町』気づいた人どれくらいいます?ほとんど気づいた?」

冒頭の短歌で『大工町 寺町米町 仏町 老婆買う町 あらずや つばめよ』とキャプションが出てるのですが、ナレーションでは『大工町 米町寺町…』と『米町』と『寺町』が逆に朗読されているのです。結局シーザーさんはその場に立ち会ってないのでなぜこうなったのか分からないそうです。単なるミスなのか何か事情があったのか…果たして…!?

その後は告知など。シーザーさんは万有引力の「SUNA」と「30周年イベント」「邪宗門」「観客席」をやりますというお話し。幾原監督は寺山ブルーレイBOXについてお話しされてました。

感想

二人のビッグネームの対談とあって、テンションが上がりっぱなしでした。質問コーナーに備えて何個か聞きたいことを考えていたのですが、本番になったら緊張して手をあげることはできませんでした。

シーザーさんは声が渋く格好良かったです。天井桟敷の関連の本を読んでいてもシーザーさんの存在感は抜群だったという証言をよく目にしますが、長身で白髪の長髪でサングラスを掛けたその姿は今でもオーラがありました。

ウテナJ・A・シーザーの存在を知り、そこから寺山さんの世界に入っていった者として、今日の対談は大変感慨深かったです。シーザーさんはしきりに「今何分?」と時間を気にしてましたが、ファンとしてはもっともっとお二人の話を聞いていたいと思いました。