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幾原邦彦作品等について語るブログ

ギンはいかに「燃えるキリン」の設立にいたったか

3巻のネタバレ大量に含みますので注意してください。

 

ノケモノ3巻面白いですね。

2巻までのロードムービーのようなノリから、一転してギンナジウム物のような学園物へ。

ギンとアリス、イタルに絞って人物描写がされるため、彼らの心情が痛いくらいに伝わってきます。

アリスとギンが精神的肉体的に追い詰められている様は見ていて苦しいものがありますが、壊れてしまいそうな2人の結びつきが美しくもピュアで心を奪われます。

ヒツジが出てこないのが寂しいですが、ギン・イタルの回想編のあとにはきっと再登場してくれるのでしょう。

まろにえ・みゆたんが同級生として登場したのも驚きでした。

 

 

3巻あらすじ

トナカイを処刑したことで自らの理念に迷いが生じたギンはアリスに自分の過去を語り始める。

全てはイタルから始まったことだった。

 

ギンは映画スターの息子という恵まれた境遇にあったが、病んだ母子関係に苦しめられていた。

彼の母は自分の苦痛から逃れるためギンを犠牲にし、ギンもまた母のために自らを否定するような子供だった。

そんなギンの前に謎の少年麒麟塚イタルが現れる。

彼は「僕は君の味方だ。」とギンに語り、母の仕打ちで心身に異常をきたしているギンに立ち上がることを促す。

一方、ギンに恋をすることで世界が変わったアリス。イタルは彼女に対して「君だけが彼を救える」と言い残し、学校から姿を消した。

アリスに酷い振る舞いをしていたギンだったが、やがて彼女は彼の苦しみを理解する者となっていった。

 

 

 

ここで気になるのは、イタルがギンの学校に現れた時、他の生徒は前からイタルが学校に居たと認識しているのに対して、ギンだけは彼を知らないということです。

一方、イタルが学校から消えたあとは、今度はギンだけが彼を覚えてますが他の皆は記憶にとどめていません。

 

この事はどう考えるべきなのでしょう。

イタルは他人の記憶を自由に書き換える能力があるのでしょうか。

黒い羽で空を飛んだり2階の窓からギンを見ていたりと、人間とは違う能力を持ってるようなのでその可能性もあるかもしれません。

 

 

今後の展開の予想

イタルとアリスと出会ったギンは、遅かれ早かれ母親と決着をつけるように思います。

そして大人に復讐するため「燃えるキリン」を設立するはずです。

3巻の段階ではまだ自分の苦しみを認識したにすぎないギンですが、ここから母親と決着をつけて、大人へ積極的に復讐を考えるようになるまでにはまだ段階があるように思います。母との対決が見ものですね。

 

また1巻2巻で「燃えるキリン」のメンバーは、イタルと同じ黒い羽と「憎悪に燃えたキリンの血」を持ってます。

ギンがそれをいかにして手に入れるのか、そして麒麟塚イタルはいつ羽熊塚イタルになるのかが気になるところです。

 

ヒトの幸いとは何か

「燃えるキリン」設立後のギンの信条は「子供を不幸にした大人達に復讐をすること」でした。

しかしトナカイは「子供はやがて大人になり、対症療法では根本の解決にならない。」と言い彼に反逆します。

トナカイも同士だった以上、かつては大人に復讐を誓っていたはずです。

しかし、復讐のための断罪をいくら繰り返してもヒトの幸せにはならないこと考え、燃えるキリンに反逆することにしたのでしょう。

トナカイの行動により信念に迷いが生じたギンはこの後どうするのでしょう。アリスに支えられて革命活動を続けるのでしょうか。

 

「幸い」については「輪るピングドラム」との関連で考えたいこともあるのですが、それは別の機会に。