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幾原邦彦作品等について語るブログ

ウテナに影響を与えたと考えられるアート作品(マニアックネタ)

ウテナへつながるアートの系譜

少女革命ウテナの世界観やキャラクター設定等は、過去の芸術作品や神話等が膨大に引用されていることが知られています。

ヘッセの「デミアン」や、過去の漫画・アニメ作品、天井桟敷や北村想の舞台、中原淳一の絵本や数々の映画作品などなど。

これらは折に触れ幾原監督も日記などで書かれていますし、書籍や研究サイトも充実しています。

その量はあまりに多いため、網羅することはかなり難しいのですが、今回は中でも昨今のネットであまりみかけないと思われる作品を紹介します。

 

二頭女-影の映画(1977年) 

監督・脚本:寺山修司 撮影:鈴木達夫 音楽:J・A・シーザー 

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まずは寺山作品から。

幾原監督は寺山修司の影響について過去のインタビューなどで度々言及しています。天井桟敷の舞台を観たときの衝撃、監督という仕事についてなどなど。

寺山作品へのオマージュとしては、ウテナ第22話に登場する指差しマークが有名ですが、第31話「彼女の悲劇」の額の中の動く絵も、寺山の影響ではないかと考えています。

 

この映画では「輪回し遊び」をする少女が登場します。

スクリーンには少女とその影が映し出されますが、やがてその影は本体から離れて、別の行動を始めます。

カメラは本体と影が分離してしまった人々を追い続けます。

どうやら影と本体が入れ替わってしまったようです。

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ウテナ第31話のあらすじは次のとおりです。

重度のブラザーコンプレックスである七実は、兄の冬芽に言い寄る女生徒を追い払い続けていた。しかしある日、冬芽と自分が本当の兄妹ではないことを知り、ショックのあまり家出をする。そんな七実に追い討ちをかけるように、自分の下僕であった茎子が兄に接近する。二人が抱き合うところを目撃した七実は茎子に殴りかかるが、もはや本当の妹でない彼女は茎子に殴り返され、冬芽にも冷たくあしらわれる。

 七実は「冬芽の妹」という特権的な立場から「血のつながらない他人」という地位に転落します。代わって日陰者だった茎子が冬芽に愛されるようになります。

かつての影と主が入れ替わる「立場」の逆転劇

額の中の少女は、「影」に取って代わられた七実の境遇を暗示しているともいえます。

この映画の中盤では、同じく額の中の絵である「縄跳び」のシーンも登場しますし、影絵少女のシーンが好きな方にもおすすめの作品です。

youtubeのリンクはこちら。

http://www.youtube.com/watch?v=UIxncAZIfQI

 

 

キャデラック・ランチ(アント・ファーム,1974

つづいてアメリカの公共芸術作品。

現代美術家の村上隆は『鳳暁生編』の車ニョキニョキはアントファーム・ダグマイケルズだと述べています(薔薇の黙示録,青林工藝舎,1998,P100)。

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(Richie Diesterheft,Cadillac Ranch, Amarillo,http://en.wikipedia.org/wiki/Cadillac_Ranch)

アントファームとは、1968年にサンフランシスコでチップ・ロードとダグ・マイケルズにより設立された前衛的な芸術集団です。キャデラック・ランチは彼らの作品です。

スタンレー・マーシュ3世という富豪がパトロンとなり、1974年に制作されました。

テキサス州アマリロのルート66沿いの小麦畑に、10台のキャデラックが頭から埋められており、ルート66の観光地としても有名です。

 

キャディラックはアメリカを代表する高級車で、その華やかなデザインは多くのスターやセレブに愛されました。ここではその絶頂期の1949年から1963年までのモデルが地中に埋められています。ルート66はシカゴとサンタモニカを結ぶ国道で、60年代モータリゼーション時代に自由を獲得したアメリカ人の象徴といわれます。

ランチ(Ranch)は「大放牧場」ですので、キャデラック・ランチとはキャデラック牧場を意味します。

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ウテナ本編で、決闘広場にスポーツカーが出現するのは、第25話「ふたりの永遠黙示録」から。第3部『鳳暁生編』に突入したところからです。

自信を喪失したデュエリスト達は、鳳暁生の車に乗せられて夜の街へ繰り出し、大人の世界を見せられます。そして自信を取り戻し、再びウテナとの決闘を挑むことになります。

第2部以降、決闘シーンではデュエリストの心の拠り所となるオブジェが象徴的に登場しますが、ここでは暁生の車は世界の果てを走る「成功者」のイメージでもあります。

出現した暁生カーは富と権力に魅せられたデュエリストたちの心象風景であり、その原イメージはルート66沿いのアメリカンドリームにあったといえるでしょう。

 

アマリロに埋まっているのはキャデラックですが、決闘広場に出現するのは1957年コルベットがモデルになっています。

実際は2シーターですが、生徒会の生徒を乗せるため4シーターに変更されています。

1957年型 コルベット フューリー

 

 

まとめ

ウテナの元ネタはもっと紹介したいのですが、ファンが自分で探す喜びを邪魔をすることになりますし、野暮にもなりかねないので、今回はここまでしようと思います。本当はその他の影響も紹介したいのですが、それはまた別の機会に。