巨大タワーの煌き
20歳になった頃。
車の免許を取得して、友人と夜の東京をドライブをした。
首都高高架下をどこまでも走る。
ビルに覆われていた視界が急に開けて、巨大な東京タワーが目に飛び込んできた。
思わず息を飲んだ。
夜空に出現した、圧倒的な光彩を放つ巨大電波塔。
移動距離が広がった僕らが最初に手に入れた風景であった。
輪るピングドラム15話。
父親から解放された時籠ゆりが、最初に目にしたのもタワーだった。
恐ろしいダビデ像が消えて、突如現れた光の物体。
それは未来が開けた瞬間だったに違いない。
ピングドラムで、時籠ゆりのこのエピソードは重い話なのだけれど、彼女がまたたく間に救われるこの劇的なシーンは大好きだ。
世界が開かれるような瞬間というのは、そうそうあるものではない。
しかし予期せず稲妻に撃たれるようなイリュージョン。
確かに存在するそれに遭遇したいと日々願っているのだ。