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幾原邦彦作品等について語るブログ

J・A・シーザー X 幾原邦彦トークショー『革命になる音楽』

ワタリウム美術館で開催中の「寺山修司展 ノック」。 関連イベントであるシーザーさんと幾原監督のトークショーに行ってきました。お二人のお話を聞くのは4月の『寺山修司◎映像詩展』以来です。寺山さんのこと、音楽のこと、ウテナのこと等、たっぷり2時間聞くことができました。 

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素敵な佇まいのワタリウム美術館。1Fは書店、2階~4階がアート展示スペースです。今回のトークショーは、当初は地下の喫茶スペースで行う予定だったものの、想定以上に申し込みがあったため、2階に変更になったとのこと。集まったお客さんは80人~100人くらい。満員のフロアは熱気にあふれていました。

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寺山修司展「ノック」関連イベント『革命になる音楽』   

日時:9月12日(木)20:00~22:00

出演: J・A・シーザー X 幾原邦彦

幾原監督とシーザーさんの出会い

幾原監督は、高校生の頃に天井桟敷の最後の方の公演を見て、バットで殴られたような衝撃を受けたと言います。とりわけその音楽に強く惹かれ、レミング等のカセットテープを買って繰り返し聞いたそうです。

その後、上京して万有引力の公演を追いかけるようになりますが、当時はイベントの情報を得るにも、ぴあ等の紙媒体を追いかけるしかなく苦労したのだとか。そのころは監督も若者の一人として、パルコ等でやっていた美輪さんのイベント等を見ていたそうです。

東映動画でディレクターになった頃、声優さんに万有引力の俳優さんと知り合いの人がいて、その人に頼んで万有引力の打ち上げに連れていってもらい、そこで初めてシーザーさんとお話しをしたそうです。監督がアニメーションをやっていることを伝えるとシーザーさんは「寺山さんもアニメが好きでね」と語り、「将来僕がオリジナル作品を作ったら音楽をやってくれますか」と尋ねると、「良いよ」と快く返事をしてくれたとのこと。しかし数年後にその話をしたときシーザーさんはその時のことを覚えていなかった……そうです。

幾原監督がシーザー曲でアニメをつくりたいと長年考えていたことは、他のインタビューでも読んでいましたが、このエピソードは初耳でした。ウテナを作ったことは、監督にとって若いころからの夢の実現でもあったのだろうと思いました。

また、シーザー曲をウテナに選択した理由として、90年代になり、文学的なものとして難しく語られがちだった寺山さんやシーザーさんの作品を、広く普通の人に親しまれるようなポジションにもう一度持ってきたかったというお話もしていました。

シーザーさんの曲の作り方

ウテナの劇伴曲は、万有引力の既存曲の中から選定したと言います。しかし中には監督からイメージの指定を受けて作った曲もあり、「あれは楽しかったね」とシーザーさんは言っていました。

シーザーさんは寺山さんに勧められて音楽を始め、邪宗門から本格的に音楽を担当するようになります。その作曲の方法は、寺山さんから音源を渡されて「こういう曲を作って」と言われたことも一度あったそうですが、大半は元となる設計図のようなものに基づいて、ワークショップを重ねながら作っていくスタイルだったようです。

現在のシーザーさんは、寺山演劇を演出するときに、セリフの変更等はせず、変更するとすれば音の方だということでした。それは例えば4拍子で音を入れていたところを8拍子にするなどです。一秒という時間はどのような長さにも感じうるというような話もされていて、これは邪宗門を観劇時に強く感じたところでした。

会場では、シーザーさんが昔ジャケ買いしたお気に入りの洋楽セレクションが流されました。女性ボーカルのポップなモノが多かったように思います。こういうセレクションが60分テープで10本くらいあるそうです。何気にそのリストが気になるところですね。

質疑応答コーナー・サイン会

後半はウテナのBGMを流しながらの質疑応答コーナー。高校生の男の子や、20歳の女の子等、若いファンからの質問も多く、盛り上がりました。

その後、関連グッズの販売とサイン会が開催されました。思いがけぬサプライズ!!

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ノックの公式カタログにサインをしていただきました。お宝です。

まとめ

この日は、幾原監督がこれまでになく饒舌で、お二人には楽しいお話をたくさんしていただけました。僕自身はウテナのリアルタイム世代ですが、会場にはウテナから寺山さんやシーザーさんを知ったという若いファンもいて、世代を超えて受け継がれていくものを感じました。お二人の未来志向で前向きなお話を聞いて、自分も頑張らなくてはと思いました。シーザーさんや幾原監督はもちろん、いろいろな方々とお話しできて幸せな夜でした。